展示に行く。東(南)アジアのどこかの国から来た人らしい。会場は十五畳ほどの小部屋で、漆喰塗りの壁面全てに絵が描かれている。版画家のT氏夫妻やY氏、H氏なんかもいて小部屋が楽しい雰囲気に満ちている。入って左側の壁面にはジョットのフレスコの様な碧を下地に太めの輪郭線でロケットや彗星や人工衛星が描かれている。輪郭線の中は精緻な線描が施してあるのだけれど、塗りの荒々しさのせいかチマチマした感じはは全くない。「いやぁ、清々しい。清々しい」とひどく心うたれながら、向かいの壁面と一続きになったしっくいの段差(ベンチ様になっている)に腰掛けていると、作家とT氏が僕のところへやってきて、「これの意味わかる?すごく良い話なんだよ」といいながら一枚の紙を手渡す。紙はあぶらとり紙のような薄紙で、イラストは印刷のようにもみえるけれど、インクがしみ込んだ感じは直接描かれたもののようにも見える。一コマ目には風通しのよさそうな木造の田舎屋と鶏、馬、ヤギとかの家畜がいる庭が描かれている。二コマ目、三コマ目と徐々に家畜の数が減り、母屋も朽ちてゆき、最後のコマには廃墟となった田舎屋と、といろんな言語で書かれた立て看板が乱れ立つ庭。立て看板に書かれているのは過去のとある国の為政者の名前や、詩や、格言のようなものらしい。4コマ全体の絵解をしてみろということらしいのだけど、さっぱりわからない。けど、謎をかけられた不快さはなく、眼前の壁と紙片の四コマの画風のちがいやら、会場全体に漂う謎めいた清潔感にむしろなんかとても楽しくなって、「ミステリー大好き」と言う、夢。