KAJIWEBLOG : 子どもの頃

2012年12月25日火曜日

子どもの頃

山をいくつか越えたところに元植字工のイギリス人版画家夫妻が住んでいて、あるクリスマスの夜に家族で食事に招かれたんですが、そのときに生まれて初めてクリスマスプディングというものを口にしました。童話でよんだことがあるようなないような、異国情緒たっぷりのそのおいしそうな食べものは、しかし、見た目の格好の良さとはうらはらになんだか変な味がして、とはいうものの、高い声で少しおかしな日本語を話す笑顔のイギリス人の前で、それをまずいと断じる気はさらさらおこらず、このクリスマスプディングというものの中には、遠く離れた場所で、長い時間をかけて積み重ねられてきた僕の知らない振る舞いや感情の固まりが、ツブツブになって混ざっていて、その上っ面をペロリとしただけでめったなことをいうべきではなかろう、とそんな難しいことを考えたわけではもちろんないけれど、格好よいのに変な味、そういうこともあるのだなぁ、この味には何かわけがあるんだろうなぁ、なんかどきどきするなぁと思ったのでした。

余談ですが、そのイギリス人版画家は多色刷りをキリッと仕上げるのがめっぽう巧い人でありました。